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『ねぇ、君ほんとうにわかってないの?』 (ルーク/ヒカリ/チハヤ)

ルーク/ヒカリ/チハヤ

(その言葉は、どんな思いで、誰に向けて言ったもの?)

『ねぇ、君ほんとうにわかってないの?』



○ru-ku○


好きなんだ、と俺の声が叫んでいた。
だけど、いくら心が叫んでも、この口は思ったようには動かない。

「? 変なルーク。」

そう言って笑う君の笑顔に、全ての言葉が吹き飛ばされる。
大丈夫。言葉なんて意味ない、ヒカリが俺の前で笑っていてくれるなら。

共有する時間が増えれば増えるほど、手放しがたくなる。
いつでも一緒に、と欲張りになっていく。

あえない時間はもどかしく、でもそんな時間すら愛しく思えて。

(ヒカリ、ヒカリ)

心の中で何度も唱える。
自分の顔が満面の笑みになっていることにも気づいているけど、やめる気もない。
どころか、言葉にならないこの気持ちの高ぶりを、ただ無闇な叫びにかえて、
愛しい愛しいこの想いを、エネルギーに変えて木材を削っていく。

「うぉぉぉー!よしできたっ!」

「どれどれ…おぉ、いい仕事してるな。どうした、最近調子いいみたいじゃねぇか。」

「へへっ、なんかさ、ヒカリのこと考えながら作業してると上手くいくんだ。」

「あーあ、先輩、仕事中にノロケなんてやめてくださいよ。」

「ノロケ?なんだそれ?」

「自覚なしか…」

またボアンがわけわからねぇことを言う。でも浮つく心は、ヒカリ以外の言葉なんていつもはねのけてしまう。
それくらい俺は、ヒカリに夢中で。
それでも、わかっているのに、俺はヒカリにこの想いを伝えることができていない。


○chihaya○


太陽みたい、なんて言葉、安っぽくて使いたくもないけど―その言葉が恐ろしく当てはまってしまう彼女だから仕方ない。
向けられる笑顔が眩しい。不覚にもドキッとして思わず目を逸らしてしまうこともある。この僕が。
発せられる言葉ひとつひとつが暖かい。僕の心を、陽だまりのように優しく包んでくれる。
きっとこの感情には「好き」という名前がつくんだろう。

ねえ、君に触れたい。

そう思っても、彼女へ伸ばした手はいつも怖気づいて、肩をすくませるにとどまる。
それがいつの間にか僕の癖みたいになっていて、彼女が「チハヤの癖」と笑って言って肩をすくませる真似をするようになった。

僕の癖? 笑わせる。

僕は君に触れようとして触れられないんだ。君はまったくその行為の本質が見えていないよ。
本当に僕の真似をしているというなら、ためらわずにいますぐ触れて。

こんなことを素直に思ってしまう僕に、僕自身心底呆れてしまう。
叶わない想いだとわかったからこそ、悪あがきのように、今更自分の気持ちに素直になったりして。

「―馬鹿じゃないの。」

「なによバカって!そういうチハヤの方がバカだよっ!」

素直に言葉に反応してしまう彼女をやはりバカだと思うが、この素直なバカさがヒカリの魅力でもあるわけで。

やっぱり好きだと思うわけで。

僕はやっぱり諦めきれずに手を伸ばす。
そして、今日もまた空振る。

「あっ、ルーク!」

鮮やかな青色に、彼女の笑顔を持っていかれる。


○hikari○


決して丸く開くことのない、疲れたような半目の彼はため息をついて、席を立ってしまった。

「えっ、ちょ…チ、チハヤ?」

青く光る髪の毛、揺れるバンダナに心がときめく。
なんだろう、わからない。彼をみてると心がどうしようもなくざわつく。
一緒にいるとドキドキする。

私はルークのことが好きなんだ。
それを自覚してしまうと、今度はルークと接することに臆病になってしまう私がいた。
嫌われたくない。もっと仲良くなりたい。ルークがシーラやキャシーと親しげに話しているのをみると、心がぎゅっと締め付けられる。

思い悩んでいたある日、私の足元にふわりと落ちてきた青い羽。
聞いたことがある、愛を告白する、プロポーズをするときに使うものだということ。
青い羽を手にしたとき、やっぱり一番に頭に浮かんだのはルークの姿。

それでも、プロポーズなんて大それたこと。
大体、ルークが私を好きかどうかもわからない。
自分のことでいっぱいいっぱいで、私はうまくルークと私との距離を測ることができないでいた。
一人で考えていても解決しない。ならば誰かに頼ろうと思ったときに頭に浮かんだのはチハヤの顔だった。

『ねぇ、どう…かな?私とルークって、仲良くみえる?』

台所へ立って背を向けるチハヤに眼を向けたまま、さっきチハヤが言った言葉を思い返す。

『ねぇ、君ほんとうにわかってないの?』

『え?え?』

いつもながらの不機嫌そうな顔で、頬杖をついて私を見ていた彼。
私がわたわたと焦っていると、しょうがなさそうな、でもとても優しい顔をして微笑み、私の頭にぽんと手を置いてくれる。
そしてその暖かい手で頭を撫でてもらうと、なんだか気持ちが落ち着いてくる。

『…傍から見て、もう半分以上付き合ってるようなもんなのに。』

一瞬哀しみの色を瞳に宿して、彼はぽそりとそう呟いた。
そしてため息、席を立ち、私に背を向けて行ってしまった。
私の頭に、不自然に優しい彼の手の平のぬくもりを残して。


○ru-ku○


こんな不安な気持ちなんて、今まで生きてきた中で感じたことがなくて、どうしようもなく胸が苦しい。
橋が落ちそうで怖いだとか、怖い話を聞いて不安になったときは持ち前の気合で吹き飛ばすことができていたから。

たまにヒカリが急に目を逸らしてよそよそしくなるときがある。
そんなとき、胸を刺すような不安が俺を襲う。

他のやつと話しているときにヒカリが楽しそうにしていても、胸が締め付けられるほどに不安になる。
ヒカリはチハヤと仲がいいみたいで、チハヤといるときのヒカリはとても自然体に見えた。

そんなとき悔しくて悔しくて、俺ってヒカリにとってなんなんだろうと思ってしまう。
格付けなんかしたくないけど、俺はいつでもヒカリの一番でいたいと思ってしまうから。

「な、なぁ。チハヤってさ、ヒカリと仲いいだろ?…ヒカリ、俺のことどう思ってると思う?俺、自分じゃなんかぐちゃぐちゃしててよくわかんねぇから、おまえの意見を聞かせてくれ!頼む!」


○chihaya○


不器用な男だ、と思う。
こんなやつのどこがいいんだ、ほんとうにヒカリはこんなヤツが好きなのか?と思うけれど、
ルークの話をするときの彼女の瞳は、間違いなく恋をしていた。
恋敵のはずなのに、なんで僕はこいつの話を聞いてやっているんだろう。
自分自身にまた呆れてため息を深くつく。

「…ねぇ、君もほんとうにわかってないの?」

ぼくはなんでこの二人に同じことを言わなきゃいけないんだろう。

「…今日の4時、ハモニカ灯台に行って。必ずだ。そこで全てわかるはずだから。」

おまけに、ぼくはなんでこんなシチュエーションまで用意してやっているんだ。

(これが彼女の幸せなんだ)

胸を締め付ける苦しい想いをぐっと押さえつける。
彼女にとって僕は親友で。彼女にとってルークは想ってやまない大好きな人で。

(僕にとって彼女は―)

愚問だ。だけど、いい。いい。もう、いい。
何度も自分に問いかけた。これでいいのか?どうにかできないか?
そう簡単に諦められるもんなのか?

答えはいつだって同じで、諦められるわけがないという。
それでも、彼女の恋する瞳をみると、自分が彼女から何かを奪ってしまうことになるんじゃないかと、そればかりが本当に怖くて。
今の彼女を変えてしまうことが、本当に恐ろしくて。

僕がこの想いに目をつぶりさえすれば、彼女を変えることなんてないんだと、そう思ってきたんだ。
後悔はない。

ねぇ、君はほんとうにわかってないの?

良い人ぶって、わざわざ二人を祝福までしてやろうとしてケーキまでこしらえたけれど、急にヒカリに腹が立って、バカらしくなって、
僕はデコレーションしていたクリームを派手にぶちまけ、ケーキをゴミ箱につっこんだ。

いい。どうせ失敗作だ。
顔を上げた先のガラス窓に映った僕の顔は、夕日に赤く染まり、目からは絶え間なく涙が流れ、

ハモニカ灯台の細長いシルエットが4時の地面を陰らす頃、鮮やかな青が輝く太陽をさらっていった。

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